笹田満由 / Mitsuyoshi Sasada
凍える火 「労働者たちは、パンよりも詩を必要とする。その生活が詩になることを必要としている」(シモーヌ・ヴェイユ)
桜
ひとり海沿いを伝って葉桜を見に行く。花びらは思っていたよりも残っていた。
ベンチを見つけ、ゆっくりと珈琲を飲みながら一服していると、海辺の方から不意に生温かい突風が首筋をすり抜け、地平を一掃するような勢いで、花びらが宙に舞った。
あっ…花に嵐──
思わず立ち上がったのだが、そのとき咄嗟に浮かんだわたしの感情は「サヨナラダケガ人生」といった無常観ではなく「赦されたんだ」という、どこか何とも言い知れぬノスタルジーめいた感慨であった。
赦されたんだ、きっと…と、なぜかそのように思えた。
…そういえば桜の香りというのは
ほとんどないことを知る。
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