十階 二編



  十階


少年は毎日
殴られ続け
痛みも

帰り道も
わからなかった
わかっているのは

…翔べる
これしかもう
わからなかった




  十階


太陽に
目を抉られ
夜を失明した

やさしい少年が
今日もまた

翔んだ
地球という
きらめきを
目指して




 ──新作 2026







夜 三篇

  


 十階


闇が

窓から

呼んでいる


支える

夜も

無いままに


もう止せ

天使よ…

ここからの

誘惑は





 十階



闇を失うと

天使たちには

翼が生えた


だから

翔ぶのだ


夜に

束の間

支えられて





 



今晩

ここに尋ねてきたのは


この

ささやかな慰め

今夜は

闇に翔ぶ


天使たちの

休息日であらん事を







天使 三篇

   


 天使


私を殺してもあなたは

救われない

たとえ

すべての人を殺しても


残ったあなたは

ひとり救われないでしょう

ならば


殺してください

世界を

あなたの手でもって




 天使


ウォッカに血を

滴らせて

花を飲む


あなたは闇に眠っていて

姿を見せない

だが最後のわたしが

あなたの唇に


滴り落ちるとき

わたしたちは

目を覚ますでしょう

 



  天使


血を注いだ

グラスを

すべり落とし


砕けてしまった

だがこれで


ようやくあなたは

わたしの暁を

迎えるでしょう








『凱歌』より




蒼穹


マッチの火に
飛び込んだ少女を
雪はやさしく包んだ

自然は美しい
だから朝になると
澄んだ瞳は

弧を描きながら
他人の空を
流れた












『凱歌』より

個性について。



作家は出来得る限り作品から個性を取り除く。
この作業を積んでいくことによって、作家の潜在意識の奥深くから普遍性を帯びた神話が個性となって浮上し、真の作品が誕生するのではないだろうか…と私は考える。






作者は答えられない…




答えは作品の中にしかない。





生命力


 ハンス・アルトゥング(Hans Hartung)の絵のImageに合わせてPiano曲を創ってみる。
 
 彼は第二次大戦中に怪我を負い、右足を切断するという辛い体験をしている。
にもかかわらず、彼の傷痕のような筆跡には、強靭な生命力の迸りを感じる…寧ろ戦争による心身の"悲痛の痕跡"が諸々の感情を生み出し、創作のエネルギーになっているのではないだろうか。




Scar (for Piano)
For Hans Hartung.

流れ星を…


作家は待っています。流れ星にめぐり合わないと作品が輝かないから。
稀に見つけたとき、それ封じこめ、
実はあなたへ密かに捧げているのです。





一瞬


芸術作品を生み出すということは
神を生み出すことと、ほぼ等しい

創作日数に拘わらず人は苦しみを
潜り抜けた時、一瞬神を見つける






廃墟



廃墟は美しいと誰もが感じる。
しかし廃墟の背景にある繁栄の最中に生きた人々は、廃墟になるであろう建造物を醜く思っていたであろう。